サラリーマン大家という妄想を抱いた人の末路
不動産投資に誘う書籍が多数出版されています。
どれもみな「これなら自分にも簡単にできそう」と思えるような内容のものばかり。
ところが、残念ながら不動産投資はそんなに簡単にできるようなものではないんです。
アドバイスした事例を紹介。
「2011年に投資用のワンルームマンション3戸を購入。さらに最近、居住用に3,900万円の一戸建てを購入しました。購入した3戸のマンションについていろいろ調べているうちに、どんでもないものに手をつけてしまったことに気づき、とても後悔しています」
この人は大企業に勤めるサラリーマンで年齢は28歳で年収500万円、貯金が250万円。新宿と目黒と三鷹のマンションを購入し、残債はトータルで6,500万円。
これに自宅のローン3,500万円が加わり、借金は計1億円です。
自宅のローンはよく審査が通ったと思います。やはり若さが物を言ったのでしょう。
販売した不動産会社がいい加減で、入居者を管理する業者が潰れてしまったにも関わらず、オーナーにそのことを知らせていませんでした。
次の管理業者も決まらないまま、宙ぶらりんの状態で放置されていたわけです。
本当はすぐにでもすべて売却したいところですが、現時点では資金がないので物件の売却は不可能。そこで、まず管理業者の件から整理すべくサポートしました。
珍しい例ではありますが、投資物件をてがける不動産会社が急増したいま、十分に起こりえるケースでもあります。
妄想を抱いたサラリーマンの末路
29歳の会社員で年収は600万円、独身で貯金は550万円あります。
平成22年と23年、投資用ワンルームマンションを2戸、練馬区と杉並区に購入しました。
「当時、投資に興味があったので不動産会社からの強い勧誘もあり、『将来の家賃収入は生保の代わり』というメリットに惹かれて購入しました。
運営はサブリース契約で、両物件の借り入れ残高が2,000万円弱、持ち出しが月に4万円あります。多少勉強はしましたが、正直なところ先の見通しが甘いまま購入してしまった感が否めません。
このように持ち出しが多い中、今後どうすればいいのか、運用、売却を含めて検討しています。
頭が混乱してなにから手をつけていいかわかりません」
いくら払って、いくら損しているのかが全然わかっていない…。
こういう人の場合はまず整理をすることです。
物件の資料を預かり、収支を計算しましたが、決論から言えば早期に売却すべきという事案でした。
この人の場合、ローン返済中の30年間は永遠に持ち出しが続くということです。
ざっくり計算すれば、30年後の年金代わりのために累計1,440万円もの持ち出し金が発生するという内容です。
このように、まずは事実を把握することが重要です。
また、サラリーマンの場合、よく「投資マンションを買っても住宅ローンは組めます」と不動産会社に言われるようです。
しかし、このことを銀行に聞いてみると、投資物件が赤字を出していると住宅ローンの審査は通らないと名言しています。
不動産投資は事業であり、事業で儲かっていないのに、さらに住宅ローンを借りて住宅を買うというのは、銀行としてはあり得ない話なわけです。
頼み込んで無理矢理ローンを通してもらったケースもありますが、それはたまたま投資物件がプラスの収支だったからです。
併せて、不動産会社はよく「不動産投資をやるなら持ち家を買うな」とも言います。
これは、住宅ローンを抱えていたら、それ以上借りられる枠が残らないからです。
年収1千万円の人が金融機関から借りられるローンの枠は、年収の35%以内と言われています。
つまり、年間350万円が返済の上限となり、これを金利2%、35年返済で計算すると7千万円程度になります。
それ以上になると返せない心配が大きくなるため、金融機関は基本的には貸出しません。
こうした融資条件を通常のエンドユーザーは知らないため、売る側は自宅購入のための住宅ローンが借りられてしまわないうちに最大限その人に売ってしまうわけです。
年齢が若くて収入も平均的であれば投資物件は購入できますが、将来、住宅ローンが借りられないとか、持ち出し資金が多くて耐えきれないというような事態に陥ってしまうのです。
結局のところサラリーマン大家とは名ばかりで、そこに残されたのは大きな負債と永遠に続く持ち出しという末路だ。